Title: 36週 原因不明 死産
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2週間程前、36週で死産しました。 一人目を帝王切開で出産しているので、今回も38週で帝王切開の予定でした。
その日は、手術前検査と10ヶ月検診でした。 いつも通り腹部エコーで赤ちゃんを見て、簡単に終わるのだと思っていました。 しかし、エコーで赤ちゃんを見るなり、先生が「心拍が見えないね・・・」私は意味がわからなかったし、そこまで深刻ではないと思いました。 「胎動を最後に感じたのはいつ?」と聞かれても、たしか昨日までは動いていたと思うけど・・・。 赤ちゃんは寝ている時もあって、常に胎動感じているわけではないので、動かなくても気にもとめていなかったし、最後に感じたのがいつかなんて正確には覚えていませんでした。
しばらくエコーを見ていたけれどやはり心拍は確認出来ず、先生が深くため息をつき、エコーを見るのをやめました。 その時の先生の表情は、今でも脳裏に焼き付いて忘れられません。 先生に「このまま長くおくのは良くないか、ら明日の午後手術しましょう。旦那さんにすぐに連絡取れる?」と聞かれ、その時初めて、状況を理解しました。
旦那と母に連絡をするため、停めてあった車の中で電話しようと一度、病院の外に出ました。車に着くまで我慢しようと思った涙は、診察室を出た瞬間溢れ出て、他の患者さんがいる待合を通る時、すでに大声を出して、今までにないほど大泣きしました。
すぐに2人が駆けつけてくれて、母は私のお腹をさすりながら、「何で?何で?代わってあげたい」と泣きました。 説明を受けるため、3人でもう一度診察室へ入り、エコーを見ましたが、やはり心拍は確認出来ませんでした。
このまま明日までお腹に入れておくなんて辛すぎる。 今すぐお腹から出して蘇生したら、もしかしたら助かるかもと思い、すぐに手術してもらえるようにお願いしました。 そして、すぐに帝王切開となりました。 一度帝王切開を経験しているので流れはわかっていました。 私は手術台の上で、先生に「赤ちゃん取り出したらすぐに蘇生してもらえますか?」とお願いしました。 先生は「酸素とかはやるけどね、もう難しいよ」と答えました。 半身麻酔で、痛みは感じないけれど多少の感覚はあり、何より意識がある事が一番嫌でした。 全身麻酔で眠ってしまいたいと思いました。
現実とはとても思えず、悪い夢なんだ、現実ではないんだと思いました。手術中、看護師さん二人が私の両手をずっと握ってくれました。
赤ちゃんは泣かず、1時間程で手術は終わり、助産師さんが、「2,088gの可愛い女の子だよ」と言って、私のところへ連れてきてくれました。私は涙が止まりませんでした。 手術室を出ると父と妹の姿があり、父は私の頭を静かに撫でました。 両家の家族がみんな来てくれて、みんなで赤ちゃんを抱っこしては涙を流しました。
二歳の娘は「赤ちゃん?」「ねんねしてるの?」と私に聞きました。 どこまで理解しているのかわからないけれど、お腹にいる時から娘も楽しみにしていました。 予定帝王切開のつもりだったので、自然分娩と違い「いつ生まれるんだろう」というドキドキを味わえない分、性別はお楽しみにしていました。 しかし9ヶ月検診の時に先生がポロッと「女の子だねー」と言ってしまい、周りには内緒にしていたものの、私だけは女の子だと知っていました。
新生児の服も、上の子のお下がりを少しずつ整理していて、退院の時ぐらいはお下がりではなく新しいものを着せてあげたいと、ベビードレスもこっそり用意していました。 名前は、娘が「あやめがいい!」とお腹にいる時から譲らず、私は他の名前を考えていましたが、少ししかお姉さんになれなかった娘につけさせてあげようと、「あやめ」と名付けました。
出産した日の夜は処置室で過ごし、横になるところがないにも関わらず、母が一晩中そばに居てくれました。 個室に移ると、夜一人になるといろいろ考えては涙が溢れ、呼吸がまともに出来なくなり、傷の痛みと後陣痛と哀しみで長い夜を過ごしました。
辛い夜はこれ以上過ごしたくないと、次の日からは家族部屋へ移動し、母と娘と過ごしました。横で娘が無邪気に笑ってくれていることで、哀しみから少しだけ救われました。 退院時、あやめのために用意しておいたベビードレスを着せてあげました。オムツも替えてあげました。痛いことも苦しいことも悲しいことも何も知らないあやめは、まるですやすやと眠っているようでした。
退院の翌日、あやめはお空に帰って行きました。 私は、その場にいたらあやめと一緒に飛び込んでしまいたいくらい辛いので、家で母と娘と待っていました。 家族があやめを連れて行く直前、私はあやめを抱きしめ、「また必ずママのところへ帰ってきてね。今度は元気に産んであげるからね。大好きだよ」とあやめに話しかけました。 二歳の娘は今でも「赤ちゃんお腹にいるの?」「もう、いないの?」と聞いたり、私が涙を流せば「えーんえーん、めーよ!」と言います。全ては理解していないにしても、わからないなりに何かを感じているようです。
帝王切開で子宮も切っているので、一年間は妊娠してはいけないと言われました。 私は一日でも早く元気な赤ちゃんを抱きたいです。一年間は長すぎます。早く笑顔になりたいのに、辛すぎます。 娘たち二人は、私にとってどちらもかけがえのない存在。同じくらい可愛くて愛おしいから、上の子のために笑顔にならなくちゃと思う反面、あやめのところへ行きたいとも思ってしまいます。 あやめに会いたい。もう一度抱きしめたい。決して叶うことのない願いです。 妊婦さんを見ると、憎いほどに羨ましいです。胎動を感じていた時を思い出して悲しくなってしまいます。 そしてそれ以上に、人のことをそんな風に見ている自分が嫌で嫌で仕方ないです。 赤ちゃんは元気に生まれてくるものだと思っていた私に、あやめは命の尊さを教えてくれました。 命を授かるのは奇跡、元気に生まれてくることも奇跡。当たり前なんかじゃないんです。 きっと、いつかまた赤ちゃんを授かって抱きしめることができても、あやめの代わりになんかならないし、一生忘れることはできないと思います。 今はただ、この辛い現実から少しでも抜け出したい、それだけです。
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