Title: 37週 誕生死
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妊娠中期より赤ちゃんの『両腎異形成、ポッター症候群』の診断があり、母体は『羊水過少』でした。 「赤ちゃんはお腹の中では元気ですが、肺が低形成なので産まれても生きることは厳しいでしょう。産声も聞けないかもしれません」 「赤ちゃんに対して、お父さんやお母さんが出来ることや、何をしてあげたいか考えていきましょう」と、言われていました。
赤ちゃんへの負担を考え、延命治療は希望しませんでした。 検診は良い話ばかりではなく、産まれても育ててあげられないことや、お別れをしなければならない覚悟が悲しくて、毎回、涙しながら帰宅していました。 周囲からの祝福や励ましの言葉も辛く、受け止められませんでした。
お母さんとして何ができるだろう、何をしてあげたいんだろうと考えても中々浮かびません。 看護師さんが、「お母さんが美味しいものを食べたり、美しいものをみて美しいと思ったりする感覚は、きっと赤ちゃんにも伝わっていますよ。大事にしてくださいね」と話してくださいました。 この言葉で、お母さんとして赤ちゃんと沢山思い出を作ろうと思えるようになりました。 思い出を残す事は、赤ちゃんを思い出すきっかけになり、辛いことかもしれない。 でも、生きられず、何も体験させてあげられず空に還るなら、お腹にいる間だけでもしっかり楽しませてあげたい思いでした。
検診の日の夕方に陣痛があり、4時間の分娩。 やっと会えた時、弱々しかったけれどちゃんと産声をあげてくれました。声が聞けないかもと言われていたので、本当に嬉しかった。 声は徐々に弱くなり、最期は私の腕の中で息を引き取りました。 家族皆で過ごしたゆったりとした30分間でした。 その後は、看護師さんのアドバイスもあり、写真を撮ったり手形や足形をとってもらいたくさんの品が残りました。
羊水がほとんどない状態で狭くて窮屈だったと思います。 看護師さんや先生から「赤ちゃん、早く会いたかったんだね。ここまでよく頑張ったね」と赤ちゃんを褒めてもらえたことが嬉しかったです。 棺には、寂しくないようにと、絵本やお兄ちゃんが書いた絵、手づくりしたスタイを入れました。 赤ちゃんの重みや声。 感覚としてあったものが少しずつ薄れていくのを感じますが、写真などの品や場所がまた思い出すきっかけになっています。
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